確定申告で使われやすい所得控除と言えば、医療費控除です。医療費控除は税金が下がるだけでなく、保育料にも影響があります。
「医療費控除は支払った医療費の合計が10万円を超えていないと使えない」と思っていたと、よく言われます。
実は配偶者特別控除が改正になり、医療費控除が活躍する場面が増えてきます。
結論からいくと年収が約310万円以下であれば、年間の医療費が10万円以下でも医療費控除が使えます。
今回は税金と保育料に影響のある医療費控除についてご紹介します。年の途中で結婚した場合などについても一緒に解説します。
こんな方におすすめ
- 年収が310万円以下の人
- 保育料を支払っている人
- 年間の医療費が10万円を超えない人
医療費控除と保育料の関係
医療費控除と保育料は密接な関係にあります。
保育料は自治体によって違い、所得によって保育料の金額が変わってきます。
保育料は所得の階層毎に決められ、階層は住民税の所得割額が基となっています。
所得割額が増えれば保育料が増え、所得割額が下がれば、保育料も下がります。
保育料は階層があるので、医療費控除によって確実に保育料が下がる訳ではありませんが、下がる可能性はあります。
医療費控除とは
医療費控除とは、支払った医療費が一定額を超えると適用される所得控除です。
メモ
・1月1日〜12月31日までの間に支払った医療費(未払いの医療費は除外)
・自分や生計を一にする配偶者、その他の親族のために支払った医療費
医療費控除の対象になる医療費は、あくまで支払った医療費になります。そのため、未払となっている医療費は対象になりません。
医療費は自分の医療費だけではない
支払った医療費は何も自分だけの医療費だけが対象ではありません。
生計を一にしている配偶者や家族のために支払った医療費も対象となるため、医療費を合計したら医療費控除が使える事があります。
年の途中で結婚した場合
年の途中で結婚した場合の医療費はどうなるでしょうか。結論からいくと、医療費を合計する事ができますが、注意が必要です。
結婚した年に支払った医療費の全額ではありません。例えば10月に結婚した場合は、結婚後の医療費は合計できますが、結婚前の医療費は合計ができません。
「生計を一にする」となっているため、そこはシビアです。
電車やバス公共交通機関の通院費は医療費控除
医療費控除は何も病院、薬局等で支払う医療費だけが対象ではありません。
医療費控除の範囲の中には、通院費も含まれています。通院費とだからと言っても、タクシー代は一般的には医療費控除の対象になりません。
しかし、病状からみて急を要する場合や、電車、バス等の利用ができない場合はタクシー代も医療費控除の対象になります。
医療費控除の計算方法
「医療費控除は10万円を超えていないと使えない」とよく言われていますが、実際はそうではありません。それは、医療費控除を計算する基をみるとわかります。
医療費控除の計算方法は以下の通りです。
メモ
医療費控除 = 実際に支払った医療費の合計額 ー 保険金等で補填される金額 ー 10万円(注)
注:総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
注意書きがポイントです。総所得金額等が200万円未満の人は、支払った医療費が10万円を超えていなくても医療費控除が使えそうです。
年間の給与収入が3,116,000円未満であれば、医療費が10万円を超えていなくても医療費控除が使えそうだよ。
給与収入が130万円の場合のシミュレーション
社会保険の扶養の130万円を目安にしてシミュレーションしてみます。
例題
・年間給与収入 1,300,000円
・社会保険料控除 190,000円
・支払った医療費 100,000円
・基礎控除以外の所得控除なし
単位:円
社会保険料控除 | 医療費控除 | 所得税 | 住民税 | 税金合計 | 手取り額 | |
扶養+医療費なし | 0 | 0 | 13,700 | 32,000 | 45,700 | 1,254,300 |
扶養+医療費あり | 0 | 67,500 | 10,300 | 25,200 | 35,500 | 1,264,500 |
社会保険+医療費なし | 190,000 | 0 | 4,000 | 13,000 | 17,000 | 1,093,000 |
社会保険+医療費あり | 190,000 | 67,500 | 600 | 6,200 | 6,800 | 1,103,200 |
*計算の都合上、住民税は10%、均等割は考慮しておりません。手取り額は給与から社会保険、税金を差し引いた金額です。
給与収入が150万円の場合のシミュレーション
配偶者特別控除の改正により、2018年度から給与収入のみの場合、年間150万円以下であれば、配偶者控除と同額の38万円が配偶者特別控除として控除される事ができます。(扶養をする方の年収が1,120万円以下の場合)
そのため、150万円まで働く方が増えています。
給与収入が150万円の場合、医療費控除が適用されたらどのくらい、税金に影響があるのかシミュレーションしてみます。
例題
・年間給与収入 1,500,000円
・社会保険料控除 215,000円
・支払った保険料 100,000円
・基礎控除以外の所得控除なし
単位:円
医療費控除 | 所得税 | 住民税 | 税金合計 | |
医療費なし | 0 | 13,000 | 30,500 | 43,500 |
医療費あり | 57,500 | 10,000 | 24,700 | 34,700 |
*計算の都合上、住民税は10%、均等割は考慮していません。
計算結果からすると、医療費控除がない場合とある場合では、税金に8,800円の影響があります。
今まで、医療費控除が10万円を超えていないと使えないと思っていた医療費が、思わぬ効果を発揮します。
給与収入と医療費の目安
年間給与収入が3,116,000円未満であれば、支払った医療費が10万円を超えていなくても医療費控除が使える可能性があります。
年間給与収入と医療費の目安を表にしたので、よかったら参考にして下さい。
単位:円
医療費の目安 | |||
年間給与収入 | 医療費の目安 | 年間給与収入 | 医療費の目安 |
110万円 | 22,500 | 220万円 | 68,000 |
120万円 | 27,500 | 230万円 | 71,500 |
130万円 | 32,500 | 240万円 | 75,000 |
140万円 | 37,500 | 250万円 | 78,500 |
150万円 | 42,500 | 260万円 | 82,000 |
160万円 | 47,500 | 270万円 | 85,500 |
170万円 | 51,000 | 280万円 | 89,000 |
180万円 | 54,000 | 290万円 | 92,500 |
190万円 | 57,500 | 300万円 | 96,000 |
200万円 | 61,000 | 310万円 | 99,500 |
210万円 | 64,500 | 320万円 | 100,000 |
医療費控除は支払った医療費が全額戻ってこない
医療費控除で勘違いしてはいけないのが、「支払った医療費は全額戻ってこない」ことです。
医療費控除はあくまで所得控除です。しかも所得控除となる金額は、10万円か総所得金額等の5%の金額の低い方を引いた後の金額です。
支払った医療費が全額戻ってくると思っていると、損をした気持ちになるので勘違いしないようにしましょう。
医療費控除の上限は200万円です。200万円を超えた場合は200万円になるので、注意して下さい。
医療費控除と副業の関係
医療費控除と副業で気をつけないといけないことが2つあります。
メモ
1.総所得金額等が増える
2.確定申告が必要
副業は給料とは違う所得です。
総所得金額等には副業の雑所得も含まれているので、給料だけだと10万円を超えなくても、副業の所得を含めると10万円を超えないと医療費控除が使えなくなるかもしれません。
20万円以下の副業は確定申告をすると税金が増える
20万円以下の副業は確定申告が不要と言われていますが、国税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。
副業をしていて20万円以下の所得は確定申告を不要にできます。
しかし、医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。
確定申告をする場合、たとえ副業の所得が20万円以下でも、確定申告をしなければなりません。
副業の所得が20万円、医療費控除が10万円であれば、20万円ー10万円=10万円となり、結果として所得が増えてまうので注意しましょう。
20万以下の副業と申告についてはこちらで確認できます
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副業が20万円以下だと確定申告は不要だが住民税の申告が必要!
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医療費控除のまとめ
共働き、副業をすると所得が増えるため税金にも影響があります。少しでも税金を安くしたいと考えるならば、医療費控除はオススメです。
今まで扶養の範囲内で働いていた方も「税金がでないから必要ない」と思うのはやめましょう。
税金だけでなく保育料に影響があるかもしれないので、積極的に医療費控除を使ってみてはいかがでしょうか。
医療費控除を受けるためには、医療費の領収証が必要になるので、領収証を保存しておくと良いです。