副業で自宅を使っている場合、家賃や電気代、インターネット代などの一部を必要経費にできることがあります。
ただし、支払った金額をそのまま全額経費にできるわけではありません。私生活と副業の両方に使っている費用は、副業で使った分だけを分けて経費にします。これが「家事按分」です。
たとえば、月10万円の家賃のうち、自宅の20%を副業専用のスペースとして使っているなら、月2万円を副業分として計算する方法があります。
家事按分には「家賃は30%まで」「通信費は50%まで」といった一律の割合はありません。大切なのは、実際の使い方に合った割合を決め、その根拠を説明できるようにしておくことです。
この記事では、副業で家事按分できる費用、割合の決め方、家賃・光熱費・通信費の計算方法、残しておきたい記録について分かりやすく解説します。
副業の家事按分に関するよくある質問
副業が雑所得でも家事按分できますか?
副業が雑所得に該当する場合でも、収入を得るために必要な費用は、雑所得を計算するときに差し引けます。
たとえば、自宅のインターネット回線を私生活と副業の両方で使っている場合、副業に必要な部分を明確に分けられれば、その部分を必要経費にできる可能性があります。
ただし、「副業だから」「雑所得だから」という理由だけで家賃や通信費を経費にできるわけではありません。その支出が副業収入を得るために必要だったかを確認する必要があります。
白色申告でも家事按分できますか?
副業が事業所得に該当し、白色申告をしている場合でも家事按分はできます。
重要なのは青色申告か白色申告かだけではなく、副業に必要な部分を明確に分けられるかです。
たとえば、自宅全体の床面積と仕事部屋の床面積が分かっていれば、面積をもとに家賃の副業分を計算できます。
「白色申告だから50%を超えなければ経費にできない」というわけでもありません。副業に必要な部分を明確に区分できれば、50%以下でも必要経費にできる場合があります。
副業の青色申告については、以下の記事もご確認ください。
開業届を出していなくても家事按分できますか?
開業届を出していないことだけを理由に、必要経費にできなくなるわけではありません。
確認するのは、実際に副業による収入があり、その収入を得るために必要な支出だったかどうかです。
ただし、開業届を出したかどうかと、副業の所得が事業所得・雑所得のどちらに当たるかは別の問題です。
「開業届を出したから事業所得になる」「出していないから雑所得になる」と単純に決まるものではありません。
副業の家事按分とは生活費のうち副業で使った分だけを経費にすること
副業に関係する支出は、次の3つに分けると考えやすくなります。
- 私生活だけに使った費用
- 副業だけに使った費用
- 私生活と副業の両方に使った費用
家事按分が必要になるのは、3つ目の「私生活と副業の両方に使った費用」です。
私生活だけに使ったお金は経費にできない
食費や普段着、家族との旅行代など、私生活のために使ったお金は必要経費にできません。
「自宅で副業をしているから」という理由で、生活費の一部をまとめて経費にすることもできません。
家事按分は、本来は生活費である支出を経費に変える仕組みではなく、私生活と副業が混ざっている費用から、副業に使った部分だけを取り出すためのものです。
参考:国税庁「No.2210 必要経費の知識」
副業だけに使ったお金は家事按分せず経費にできるか判断する
副業専用の有料ツールや業務用の備品など、私生活では使わないものは家事按分する必要がありません。
その支出が副業収入を得るために必要なものであれば、必要経費にできるかをそのまま判断します。
たとえば、副業専用で契約しているWebサービスの料金であれば、私生活分と分ける必要はありません。
ただし、パソコンや高額な機材などは、購入金額や使用可能期間によって、購入した年に全額を必要経費にするのではなく、減価償却が必要になる場合があります。
私生活と副業の両方で使うお金だけを割合で分ける
家賃、電気代、インターネット代、スマホ代などは、私生活と副業の両方で使うことがあります。このような費用について、実際の利用状況に合わせて副業分と私生活分に分けるのが家事按分です。
たとえば、月10万円の家賃のうち20%を副業分と判断できるなら、10万円×20%=2万円となり、2万円が副業分です。
家賃10万円のすべてを経費にするわけではありません。
家事按分の割合は「何%まで」と決まっているわけではない
家事按分には、「家賃は30%まで」「通信費は50%まで」といった一律の割合はありません。
費用ごとに、実際の使い方を表しやすい基準を選びます。
副業で実際にどのくらい使っているかをもとに割合を決める
割合を決めるときは、その費用を副業でどのくらい使っているかを考えます。
代表的な基準は次のとおりです。
- 家賃:仕事に使っている床面積
- 電気代:仕事時間や仕事で使う機器
- インターネット代:仕事での利用時間や利用状況
- スマホ代:仕事での通話時間やデータ通信の利用状況
- 車の費用:仕事で走った距離や使用日数
どの費用にも同じ割合を使うのではなく、その費用の使い方を表しやすい基準を使うことが大切です。
ネット上の「家賃30%」「通信費50%」などをそのまま使わない
インターネット上では、「家賃は30%」「スマホ代は50%」などの割合を見かけることがあります。しかし、この数字がすべての人に当てはまるわけではありません。
同じ在宅副業でも、
- 自宅の広さ
- 仕事部屋の有無
- 1日の副業時間
- 家族がインターネットを使う時間
- スマホを仕事で使う頻度
などは人によって異なります。
他の人が使っている割合ではなく、自分の利用状況から説明できる割合を決めましょう。
副業で使う割合が50%以下でも経費にできる場合がある
「仕事で50%以上使っていないと家事按分できない」と考える方もいますが、必ずしもそうではありません。
業務に必要な部分が50%以下であっても、必要な部分を明確に区分できる場合は、その部分を必要経費にできる可能性があります。
たとえば、自宅の10%だけを明確に仕事専用スペースとして使用している場合、「10%だから経費にできない」と一律に判断するわけではありません。
重要なのは50%という数字ではなく、その割合をどのように計算したのか説明できることです。
副業で家事按分できる主な費用と割合の決め方
副業で家事按分の対象になりやすい費用と、割合を考えるときの基準をまとめると次のようになります。
| 費用 | 割合を考える主な基準 | ポイント |
|---|---|---|
| 家賃 | 仕事に使う床面積、使用時間 | 専用スペースか、リビングなどとの共用かを確認する |
| 電気代 | 仕事時間、使用機器、消費電力など | 自宅全体の電気代を単純に仕事時間だけで分けない |
| インターネット代 | 利用時間、通信量、利用人数など | 家族や私生活での利用分を考慮する |
| スマホ代 | 通話時間、通信量、使用状況 | 通信料金と端末代は分けて考える |
| 車両費 | 仕事で走った距離、使用日数 | 日付・目的・走行距離を記録すると分かりやすい |
| 水道代 | 副業で使用した水量や回数 | デスクワークなら業務との関係を確認する |
| ガス代 | 副業で使用した時間や回数 | 自宅で仕事をしているだけでは按分しにくい |
特に注意したいのが水道代やガス代です。
Webライターやブログ運営など、パソコンを中心に行う副業の場合、自宅にいるというだけで水道代やガス代の一部が自動的に必要経費になるわけではありません。
その副業で水やガスを使う必要があるのかを確認してから判断しましょう。
家事按分は「支払った金額×副業で使った割合」で計算する
家事按分の基本的な計算式はシンプルです。
- 支払った金額×副業で使った割合=副業分の金額
難しいのは計算そのものではなく、「副業で使った割合」をどのように決めるかです。
費用ごとに具体例を見てみましょう。
家賃は仕事に使うスペースや時間から計算する
自宅に仕事専用のスペースがある場合は、床面積を基準にすると分かりやすくなります。
たとえば、次の条件で考えます。
- 家賃:月10万円
- 自宅全体:50平方メートル
- 仕事専用スペース:10平方メートル
仕事で使う割合は、10平方メートル÷50平方メートル=20%です。
そのため、1か月の副業分は、10万円×20%=2万円。年間では、10万円×12か月×20%=24万円となります。
ただし、この計算は10平方メートルを仕事専用で使っている場合の例です。
リビングやダイニングの一角で副業をしており、仕事以外の時間にもその場所を使っている場合は、面積だけでなく使用時間も考慮した方が実態に合うことがあります。
「自宅の20%のスペースで仕事をしているから必ず家賃の20%」と決めるのではなく、実際の使い方に合っているか確認しましょう。
電気代は仕事時間や使用する機器から計算する
電気代は、単純に「1日24時間のうち副業を4時間しているから、6分の1を経費にする」と決めればよいとは限りません。
冷蔵庫や照明、テレビ、エアコンなど、自宅では仕事と関係なく電気を使っているからです。
そのため、
- 副業をしている時間
- パソコンやモニターなど仕事で使用する機器
- 仕事部屋の照明やエアコン
- 自宅全体の使用状況
などを考えて、実態に合う割合を決めます。
たとえば、月1万円の電気代について、仕事時間や使用機器などから副業分を20%と合理的に説明できる場合は、1万円×20%=2,000円がその月の副業分となります。
通信費は副業で使った時間や利用状況から計算する
インターネット代やスマホ代も、副業で使用した割合をもとに計算します。
実際には、
- 副業でインターネットを使った時間
- 私生活で使った時間
- 家族の利用状況
- 副業専用端末の有無
- 通話や通信の利用記録
などから、自分の使い方を表せる割合を考えます。
毎日の利用時間を細かく記録するのが難しい場合でも、一定期間の利用状況を記録し、その結果を割合の根拠として残しておくことが大切です。
家事按分した割合を説明できるように記録を残す
家事按分では、割合を細かくすること以上に、なぜその割合にしたのかを後から説明できることが重要です。
支払額が分かる資料と、割合を計算した根拠をセットで残しておきましょう。
領収書や請求明細など支払った金額が分かる資料を残す
まず、実際にいくら支払ったのかが分かる資料を保存します。
たとえば、次のような資料です。
- 領収書
- 請求書
- 賃貸借契約書
- 電気料金の明細
- インターネット料金の明細
- スマホ料金の明細
クレジットカードの利用明細だけでは支払いの詳しい内容が分からない場合は、請求書や契約内容なども一緒に残しておくと確認しやすくなります。
面積・時間・走行距離など割合を決めた根拠を残す
次に、「なぜ20%なのか」「なぜ40%なのか」が分かる資料を残します。
たとえば、
- 家賃:間取り図、仕事スペースの面積
- 電気代:副業時間、使用している機器
- 通信費:利用時間や通信状況のメモ
- 車両費:日付、移動目的、走行距離
などです。
家賃を面積で計算するなら、仕事スペース10㎡÷自宅全体50㎡=20%のように計算式も残しておくと、後から確認しやすくなります。
一度決めた割合だけを記録するのではなく、その割合を出した方法まで残すことがポイントです。
副業の働き方が変わったら割合も見直す
家事按分の割合は、一度決めたらずっと同じ割合を使うものではありません。
たとえば、
- 引っ越して仕事部屋の広さが変わった
- 副業時間が大きく増えた
- 在宅ではなく外で仕事をすることが増えた
- 家族がインターネットを使う時間が増えた
- 副業専用のスマホを契約した
といった変化があれば、割合も見直します。
その年の実際の利用状況と合わなくなった割合を、そのまま使い続けないようにしましょう。
副業の家事按分でよくある間違い
家事按分で大切なのは、「できるだけ多く経費にすること」ではありません。
実際に副業で使った部分を、説明できる方法で経費にすることです。
よくある間違いを確認しておきましょう。
他の人が使っている割合をそのまま使う
「副業なら家賃30%」「スマホは50%」といった情報を見つけても、その割合をそのまま使わないようにしましょう。
他の人とは、自宅の広さや副業時間、家族の利用状況などが違います。
自分の利用状況をもとに割合を決め、その計算方法を残しておくことが大切です。
事業用のカードで払えば全額経費になると考える
事業用のクレジットカードや銀行口座から支払っても、その支出が自動的に全額必要経費になるわけではありません。
たとえば、私生活と副業で共用しているインターネット代を事業用カードで支払ったとしても、私生活分まで経費にできるわけではありません。
何で支払ったかではなく、何のために使ったかで判断します。
経費を増やすため実際より高い割合にする
必要経費を増やすために、実際より高い割合を設定することはできません。
たとえば、仕事で使っているのが自宅の一部だけなのに、根拠なく家賃の50%を副業分とするのは適切ではありません。
家事按分では、「税務署から割合の理由を聞かれたときに説明できるか」という視点で考えると分かりやすくなります。
割合に迷う費用は、無理に経費にするのではなく、まず実際の利用状況を確認しましょう。
住宅ローンの返済額や生活費までまとめて経費にする
持ち家で副業をしていても、住宅ローンの返済額そのものを家賃のように家事按分して経費にすることはできません。
住宅ローンの返済には「元本」と「利息」が含まれます。このうち、元本の返済は借りたお金を返しているだけなので、必要経費にはなりません。
一方、住宅ローンの利息や建物の減価償却費、固定資産税などについては、副業に使用している部分が必要経費に当たるかを個別に判断します。
また、食費などの私生活だけに使った費用を、家で副業をしているという理由でまとめて家事按分することもできません。
まとめ
副業の家事按分とは、私生活と副業の両方に使っている費用から、副業で使った分だけを必要経費として分けることです。
家賃、電気代、インターネット代、スマホ代などは家事按分の対象になることがありますが、「家賃は30%」「通信費は50%」のような一律の割合が決まっているわけではありません。
家賃なら床面積、通信費なら利用時間、車両費なら走行距離など、その費用に合った基準から割合を計算します。
家事按分をするときは、次の流れで考えると分かりやすくなります。
- 私生活だけ・副業だけ・両方で使う費用に分ける
- 両方で使う費用について副業分の割合を決める
- 「支払額×副業割合」で副業分を計算する
- 支払資料と割合の根拠を残す
- 働き方が変わったら割合を見直す
大切なのは、できるだけ高い割合にすることではなく、自分の利用実態に合った割合を説明できるようにしておくことです。
判断が難しい費用がある場合は、税務署や税理士に確認しましょう。

