副業の確定申告を始めようとしても、本業の給与に関する書類と副業の取引資料が混ざると、「何を用意すればよいのか」と迷いやすいものです。
必要な書類・資料は、副業の収入が「給与」なのか、「業務委託や物販など給与以外」なのかによって異なります。
まずは収入源ごとに資料を分けて集めましょう。そのうえで、確定申告への入力に使うもの、提出するもの、申告後も保存するものに分けると整理しやすくなります。
この記事では、会社員が副業の確定申告をするときに必要な書類・資料と、不足している場合の集め方を分かりやすく解説します。
副業の確定申告に必要な書類は「給与」と「給与以外」で異なる
アルバイトなど給与の副業では源泉徴収票が必要になる
アルバイトやパートなど、勤務先から給与を受け取っている場合は、その勤務先から交付された源泉徴収票を準備します。
源泉徴収票には、給与の支払金額や源泉徴収税額などが記載されています。確定申告では、これらの金額を確認して申告書へ入力します。
確定申告をする場合は、副業先だけではなく、本業の勤務先から受け取った源泉徴収票も必要です。
参考:国税庁「申告書の提出」
業務委託・物販などでは売上や経費が分かる資料が必要になる
業務委託や物販など給与以外の副業では、売上、経費、報酬から差し引かれた所得税などを確認できる資料を集めます。
請求書、販売明細、銀行口座の入金履歴、領収書、クレジットカード明細などを、取引ごとに確認できる状態にしておくと集計しやすくなります。
アルバイトなど給与の副業では本業と副業先それぞれの源泉徴収票を準備する
給与の副業がある場合は、申告する年分の本業と副業先それぞれの源泉徴収票を準備します。本業の会社で年末調整を受けていても、確定申告をする場合は本業の給与についても申告内容へ反映するためです。
源泉徴収票では、主に次の項目を確認します。
- 給与の支払金額
- 源泉徴収税額
- 年末調整で反映された控除
副業先が複数ある場合は、勤務先ごとに源泉徴収票が揃っているか確認してください。
紙で受け取っていなくても、勤務先のWebシステムなどから電子データで交付されている場合があります。
業務委託・物販などの副業で必要になる書類・資料
業務委託や物販など給与以外の副業では、主に「売上」「経費」「源泉徴収された所得税」を確認できる資料を集めます。
同じ取引について請求書と入金履歴の両方がある場合でも、それぞれを別の売上として計上するわけではありません。複数の資料を照らし合わせながら、1年間の取引を整理しましょう。
請求書・売上明細・入金履歴など売上が分かる資料
売上は、請求書、販売・取引明細、銀行口座の入金履歴などを照らし合わせて確認します。取引先、取引日、金額が分かるように整理しておくと、申告時だけでなく、後から内容を確認するときにも役立ちます。
注意したいのが、実際の入金額と売上金額が同じとは限らないことです。たとえば、報酬から源泉所得税や手数料が差し引かれて振り込まれている場合、入金額だけをそのまま売上として扱うと、本来の売上金額と合わなくなることがあります。
また、同じ取引の請求書と入金履歴を別々の売上として足すと二重計上になるため注意してください。
原則として、収入は入金日だけを基準に集計するのではなく、年末時点で未入金の取引も確認します。
現金主義による所得計算の特例を受けている場合は扱いが異なるため、該当する方はその方法に沿って整理しましょう。
参考:国税庁「収入金額とその計算」
領収書・請求書・カード明細など経費が分かる資料
副業に必要な支出を経費として計上する場合は、その内容を確認できる資料を準備します。たとえば、次のような資料です。
- 領収書
- 請求書
- クレジットカード明細
- ネット通販の購入履歴
- 銀行口座の振込履歴
大切なのは、お金を払ったことだけではなく、「副業のために必要だった支出であること」を確認できる状態にすることです。
クレジットカード明細に店舗名と金額しか表示されておらず、何を購入したのか分からない場合は、購入明細や請求書も確認しておきましょう。また、スマートフォン代やインターネット料金など、副業と私生活の両方で使っている支出は、副業で使用した分を合理的に分ける必要があります。
領収書があるからといって、支払額のすべてを経費にできるわけではありません。
副業の経費については、以下の記事もご確認ください。
参考:国税庁「必要経費の知識」
支払調書など報酬から引かれた税金が分かる資料
原稿料やデザイン料など、一部の報酬では支払時に所得税が源泉徴収されている場合があります。支払調書を受け取っている場合は、報酬額や源泉徴収税額を確認する資料として使えます。
ただし、支払調書がなければ確定申告できないわけではありません。
支払調書は、すべての報酬について本人へ交付することが義務付けられている書類ではないためです。手元にない場合は、請求書、支払明細、入金履歴などから、税引前の報酬額と源泉徴収税額を確認しましょう。
参考:国税庁「法定調書に関するFAQ」
青色申告決算書・収支内訳書など売上と経費をまとめる書類
副業の所得区分や申告方法によっては、売上と経費をまとめた青色申告決算書や収支内訳書を作成します。事業所得で青色申告をする場合は青色申告決算書、白色申告の場合は収支内訳書を作成します。
また、業務に係る雑所得では、前々年の収入金額が1,000万円を超える場合に、令和4年分以後の申告で収支内訳書の提出が必要です。
副業をしているすべての方が、青色申告決算書や収支内訳書を作成するわけではありません。売上や経費の資料を揃えたうえで、自分の所得区分や申告方法に応じて必要な書類を作成しましょう。
副業の青色申告については、以下の記事もご確認ください。
副業の種類にかかわらず共通して確認する書類や情報
副業の売上や給与に関する資料以外にも、申告内容によって必要になるものがあります。
主に確認したいのは、所得控除に関する資料、マイナンバー・本人確認、還付金を受け取る口座です。
確定申告で追加する控除の証明書や明細
本業の年末調整ですでに反映されている控除とは別に、確定申告で追加する控除がある場合は、その内容を確認できる資料を準備します。たとえば、次のようなものがあります。
- 医療費控除の明細書を作成するための資料
- 寄附金の受領証明書
- 年末調整に反映していない保険料などの控除証明書
本業の年末調整ですでに反映された控除については、原則として同じ証明書を改めて添付・提示する必要はありません。
ただし、確定申告をするときに、その控除自体を申告から外すという意味ではありません。また、ふるさと納税のワンストップ特例を申請していても、その後に確定申告をする場合は、ふるさと納税分も寄附金控除として申告に含めます。
対象となる証明書などは、条件を満たせばマイナポータル連携によって取得・自動入力できる場合もあります。
参考:国税庁「申告書に添付・提示する書類」
参考:国税庁「ふるさと納税(寄附金控除)」
マイナンバーと本人確認に必要な書類や情報
確定申告書にはマイナンバーを記載します。紙で提出する場合は、番号確認と本人確認のための書類を提示するか、写しを添付します。郵送する場合は必要な本人確認書類の写しを添付します。
マイナンバーカードを使う場合は、表面と裏面で番号確認と本人確認ができます。一方、自宅からe-Taxで送信する場合は、本人確認書類の写しを添付・提示する必要はありません。
マイナンバーカード方式を利用する方は、カード本体だけでなく、必要な暗証番号や読み取りに使うスマートフォンなども事前に確認しておきましょう。
税金が戻る場合の本人名義の振込先口座
確定申告によって所得税が還付される場合は、還付金を受け取る口座情報も確認しておきましょう。金融機関名、支店名、預金種別、口座番号などを確認します。
口座は原則として申告する本人名義のものを指定します。屋号などが名義に含まれていると振込みできない場合があります。また、一部のインターネット銀行では還付金を受け取れない場合があるため、利用する場合は金融機関にも確認してください。
参考:国税庁「税金の還付」
必要な書類や資料はすべて税務署へ提出するわけではない
ここまで紹介した資料を、すべて確定申告書に添付して税務署へ提出するわけではありません。副業の確定申告に関する資料は、大きく次の3つに分けて考えると分かりやすくなります。
- 申告内容を確認・入力するために使うもの
- 確定申告書と一緒に提出・送信するもの
- 申告後も手元で保存するもの
源泉徴収票などは金額を確認して確定申告へ入力する
本業や副業先から受け取った給与所得の源泉徴収票は、給与額や源泉徴収税額などを確認して確定申告へ入力します。
現在は、給与所得の源泉徴収票を確定申告書に添付・提示する必要は原則ありません。ただし、税務署などで申告書を作成する場合は、内容確認のために源泉徴収票を持参します。
支払調書なども、報酬額や源泉徴収税額を確認する根拠として整理しておきましょう。
青色申告決算書や収支内訳書などは必要に応じて提出する
事業所得で青色申告をする場合は青色申告決算書を、白色申告をする場合は収支内訳書を確定申告書とあわせて提出します。業務に係る雑所得についても、前々年の収入金額が1,000万円を超える場合は収支内訳書を提出します。
追加する所得控除に関する書類も、控除の種類や提出方法によって添付などが必要になる場合があります。
e-Taxでは、一部の証明書について記載内容を送信することで添付を省略できる場合がありますが、申告後に資料を保存しなくてよいという意味ではありません。
帳簿・請求書・領収書などは原則として手元で保存する
副業の売上や経費を確認するために使った帳簿、請求書、領収書などは、原則として確定申告書へ添付するのではなく、手元で保存します。保存が必要な期間は、所得の種類、申告方法、書類の種類によって異なります。一律に同じ年数と考えず、自分に該当する保存ルールを確認しましょう。
また、メールで受け取った請求書やWebサイトからダウンロードした領収書など、電子データでやり取りした取引情報は、対象となる場合は電子データで保存します。
| 資料 | 確定申告での主な使い方 | 申告後 |
|---|---|---|
| 源泉徴収票 | 給与額・源泉徴収税額などを入力 | 内容を確認できるよう保管 |
| 青色申告決算書・収支内訳書 | 必要な方は確定申告書とあわせて提出・送信 | 控えや作成根拠を管理 |
| 請求書・領収書・売上明細 | 売上・経費の集計に使用 | 必要な期間保存 |
| 電子取引データ | 売上・経費の確認に使用 | 必要な方法で電子保存 |
| 控除証明書・明細 | 所得控除の入力・申告に使用 | 必要に応じて保存 |
確定申告書に添付しなかった資料でも、申告後の保存が必要になることがあります。
提出しなかったからといって、すぐに処分しないようにしましょう。
必要な書類や資料が見つからない場合の確認方法
必要な資料が見つからなくても、確定申告を止める必要はありません。資料の種類によって確認先が異なるため、勤務先、取引先、金融機関、サービス運営会社などへ早めに確認しましょう。
源泉徴収票がない場合は勤務先へ再発行を依頼する
源泉徴収票をなくした場合は、発行した勤務先へ再発行を依頼します。勤務先のWebシステムから電子交付されている場合もあるため、再発行を依頼する前に給与明細などを確認するシステムも見ておきましょう。
税務署が、紛失した源泉徴収票を代わりに再発行するわけではありません。勤務先へ交付を求めても源泉徴収票を受け取れず、交付期限を過ぎている場合は、国税庁の「源泉徴収票不交付の届出手続」を確認します。
ただし、この手続は、一度受け取った源泉徴収票を紛失した場合の再発行に使うものではありません。
支払調書がなくても請求書や入金履歴などから金額を確認する
業務委託などの副業では、支払調書が送られてこない場合があります。
支払調書がなくても、請求書、支払明細、銀行口座の入金履歴などから申告に必要な金額を確認できます。まずは、税引前の報酬額、実際に源泉徴収された所得税、手数料などを分けて整理しましょう。
「請求額と入金額の差額=すべて源泉所得税」とは限りません。振込手数料やサービス利用料などが差し引かれている場合もあるため、内訳が分からない場合は支払元へ確認してください。
Web上の売上明細やカード明細は見られるうちに保存する
ネットショップ、クラウドソーシング、フリマアプリ、クレジットカードなどの取引履歴は、いつまでもWeb上で確認できるとは限りません。確定申告に必要な年分について、期間全体のデータを取得できるか確認しましょう。
CSVやPDFなどでダウンロードできる場合は保存し、月ごとに抜けているデータがないかも確認します。電子取引データの保存対象となる場合は、印刷するだけではなく、電子データも保存しましょう。
控除の証明書をなくした場合は発行元などから再取得する
保険料控除証明書や寄附金の証明書などをなくした場合は、まず発行元へ再発行や電子取得ができるか確認します。保険会社であれば、契約者向けWebサービスから再取得できる場合もあります。国民年金保険料の控除証明書は、ねんきんネットから再交付を申請できます。
また、一部の証明書はマイナポータル連携で取得できる場合があります。すべての証明書を同じ方法で再取得できるわけではないため、発行元ごとの案内を確認しましょう。
参考:日本年金機構「控除証明書を紛失してしまったのですが再発行できますか。」
確定申告を始める前に必要な書類や資料が揃ったかチェックする
申告書への入力を始める前に、必要な資料が揃っているか確認しましょう。すべての項目が全員に必要なわけではありません。自分に当てはまるものだけを確認してください。
- 申告する年分の本業・副業先の源泉徴収票が揃っている
- 給与以外の副業について、1年間の売上と年末時点の未入金取引を確認した
- 副業に必要だった経費の資料を揃え、私用分と分けた
- 報酬から源泉徴収された所得税や手数料の内訳を確認した
- 青色申告決算書または収支内訳書が必要か確認した
- 確定申告で追加する所得控除の資料を揃えた
- 提出方法に応じたマイナンバー・本人確認の準備をした
- 還付を受ける場合は本人名義の振込先口座を確認した
- 電子で受け取った請求書や領収書などを保存した
- 不足している資料がある場合は確認先を決めた
資料が揃ったら、給与や売上、経費などを整理して確定申告書の作成へ進みます。
確定申告が必要になる基準や20万円ルール、申告全体の流れについては以下の記事もご確認ください。
まとめ
副業の確定申告で必要な書類は、副業の収入形態によって異なります。アルバイトなど給与の副業では、本業と副業先の源泉徴収票を準備します。業務委託や物販など給与以外の副業では、売上や経費、源泉徴収された所得税を確認できる資料を揃えましょう。
また、集めた資料をすべて税務署へ提出するわけではありません。申告への入力に使う資料、提出する書類、申告後も手元で保存する資料に分けて考えると整理しやすくなります。
不足している資料があれば、源泉徴収票は勤務先、報酬の内訳は支払元、控除証明書は発行元などへ確認してください。最初に必要な資料を揃えてから確定申告の入力を始めると、途中で資料探しのために作業が止まりにくくなります。


