本業の給与とは別に、Webライターやブログ、物販などの副業を続けていると、「青色申告にすれば65万円控除を受けられるのでは」と考える方もいるでしょう。会社員でも、副業による所得が事業所得などに当たり、必要な申請や記帳をすれば青色申告を利用できます。
ただし、Webライターや物販をしていることや、開業届を提出したことだけで青色申告ができるわけではありません。まず確認したいのは、副業による所得が事業所得と雑所得のどちらに当たるかです。
この記事では、副業が青色申告の対象になる条件、事業所得と雑所得の考え方、申請期限、メリット、青色申告を始める流れを会社員向けにわかりやすく解説します。
副業の青色申告に関するよくある質問
会社員でも副業を青色申告できますか?
会社員でも青色申告できます。
副業による所得が事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかに当たり、青色申告の承認を受けて記帳などの要件を満たしていれば対象になります。会社員であることだけを理由に、青色申告ができなくなるわけではありません。
副業が雑所得でも青色申告できますか?
雑所得には青色申告を利用できません。
同じWebライターや物販の副業でも、活動の実態によって事業所得になる場合と雑所得になる場合があります。開業届を出したことや、帳簿をつけていることだけで事業所得になるわけではありません。
副業でも65万円の控除を受けられますか?
事業所得などがあり、複式簿記による記帳や期限内申告などの要件を満たしたうえで、e-Taxで申告するか、一定の電子帳簿保存を行えば最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。
ただし、65万円がそのまま税金から差し引かれるわけではありません。所得から最大65万円を差し引いて税金を計算する制度です。なお、2027年分以後は控除額や要件が変わります。
青色申告の申請期限を過ぎるとどうなりますか?
その年分から青色申告をするための申請期限を過ぎた場合、原則としてその年分は青色申告にできません。
以前から事業をしている場合は、原則として青色申告をしたい年の3月15日までです。その年の1月16日以後に新しく事業を始めた場合は、事業開始日から2か月以内となります。確定申告書の提出期限とは別なので注意しましょう。
会社員の副業でも青色申告できる場合がある
青色申告ができるかどうかは、会社員か個人事業主かという肩書きだけでは決まりません。重要なのは、副業からどの種類の所得が生じているかです。
青色申告できるのは事業所得などがある場合
青色申告の対象になるのは、次の3つの所得です。
- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
会社員が勤務先から受け取る給与は給与所得なので、本業の給与そのものを青色申告にすることはできません。
一方、副業が事業所得などに当たる場合は、本業で給与を受け取っている会社員でも、その副業について青色申告を利用できます。
参考:国税庁「青色申告制度」
アルバイトや雑所得の副業は青色申告できない
雇用契約によるアルバイトの給与や、雑所得に当たる副業は青色申告の対象外です。代表的な副業を整理すると、次のようになります。
| 副業の例 | 所得の種類 | 青色申告 |
|---|---|---|
| 事業として行うWebライター・ブログ・仕入販売など | 事業所得 | 要件を満たせばできる |
| 事業といえる規模に至らない副業 | 業務に係る雑所得 | できない |
| 雇用契約によるアルバイト | 給与所得 | できない |
| 不動産の貸付け | 不動産所得 | 要件を満たせばできる |
ここで注意したいのは、仕事内容だけで事業所得か雑所得かを決められないことです。
たとえば、同じWebライターでも事業所得になる方と雑所得になる方がいます。次に、自分の副業が事業所得に当たるかを判断するときの考え方を確認しましょう。
自分の副業が事業所得になるかを確認する
Webライター、ブログ、物販などをしているからといって、自動的に事業所得になるわけではありません。業務委託契約で報酬を受け取っている場合も同じです。
事業所得か雑所得かは、職種名ではなく、実際にどのような形で副業を続けているかを見て判断します。
副業の続け方や仕事の規模などから事業所得かを判断する
事業所得に当たるかどうかは、その活動が社会通念上「事業」といえる程度に行われているかを実態から判断します。たとえば、次のような点が判断材料になります。
- 利益を得る目的で行っているか
- 継続して仕事をしているか
- 取引上の責任や費用を自分で負っているか
- 副業にどの程度の時間を使っているか
- 仕事量や売上はどの程度あるか
- 仕事に必要な設備や環境を用意しているか
たとえば物販でも、商品を仕入れて継続的に販売し、利益を得ようとしている活動と、自宅で使わなくなった物をフリマアプリで売るケースでは性質が異なります。また、「6項目のうち4項目に当てはまれば事業所得」のような決まりがあるわけではありません。
帳簿の有無を含め、副業全体の実態から判断します。
収入300万円や開業届の有無だけでは事業所得と決まらない
「副業収入が300万円を超えれば事業所得になる」という基準はありません。国税庁では、事業所得か雑所得かを判断する際、取引を記録した帳簿書類の保存状況も重要な判断材料としています。
帳簿書類を保存していない場合は、原則として業務に係る雑所得として扱われます。
ただし、収入金額が300万円を超え、事業所得と認められる事実がある場合などは例外があります。反対に、帳簿書類を保存していれば必ず事業所得になるわけでもありません。収入がごく少ない場合や、継続して赤字で、赤字を解消するための取組が確認できない場合などは個別に判断されます。
開業届についても同じです。開業届は事業を始めたことを届け出る書類であり、事業所得であることを決める書類ではありません。
自分で判断しにくい場合は、次のような資料を整理しておきましょう。
- 売上と必要経費
- 帳簿や領収書などの記録
- 契約内容や取引先
- 取引した回数
- 副業を続けている期間
- 副業に使っている時間
- 売上や利益を増やすために行っていること
資料をまとめておけば、税務署や税理士に相談するときにも、副業の状況を伝えやすくなります。
参考:国税庁「新たに事業を始めたときの届出など」
副業を青色申告するなら申請期限を確認する
副業を青色申告したい場合は、確定申告の時期になってから考えるのではなく、事前に青色申告承認申請書を提出する必要があります。
いつから事業をしているかによって期限が変わるため、分けて確認しましょう。
以前から事業をしている場合は原則3月15日までに申請する
前年以前から事業をしていて、その年から初めて青色申告をしたい場合は、原則としてその年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出します。
3月15日が土曜日、日曜日、祝日などに当たる場合は、原則として翌開庁日が期限です。たとえば2026年は3月15日が日曜日だったため、2026年分から青色申告を始める場合の提出期限は2026年3月16日でした。「2026年分の確定申告を2027年にするときに申請すればよい」という意味ではないため注意しましょう。
なお、一度青色申告の承認を受ければ、原則として毎年あらためて青色申告承認申請書を提出する必要はありません。
参考:国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」
年の途中で事業を始めた場合は開始日から2か月以内に申請する
その年の1月16日以後に新しく事業を始めた場合は、原則として事業開始日から2か月以内に青色申告承認申請書を提出します。一方、1月1日から1月15日までに事業を始めた場合は、原則としてその年の3月15日までです。
たとえば、6月1日に事業を始めた場合は、原則として8月1日までに申請します。事業開始日は、申請に都合のよい日を自由に決めるのではなく、実際に事業を始めた状況に沿って確認しましょう。
開業届と青色申告の申請は別々の手続きとして確認する
開業届と青色申告承認申請書は、それぞれ目的と提出期限が異なります。青色申告承認申請書の期限を整理すると、次のとおりです。
| 事業を始めた時期 | その年分から青色申告する場合の申請期限 |
|---|---|
| 前年以前から事業を継続 | 原則その年の3月15日 |
| その年の1月1日~15日に開始 | 原則その年の3月15日 |
| その年の1月16日以後に開始 | 原則開始日から2か月以内 |
期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たる場合は、原則として翌開庁日となります。相続によって事業を引き継いだ場合は別の期限があります。
また、2026年1月1日以後に事業を始めた場合、開業届の提出期限は「事業を始めた年分の所得税の確定申告期限まで」です。しかし、青色申告承認申請書の提出期限まで延びたわけではありません。
たとえば7月に事業を始めた場合、開業届は翌年の確定申告期限まで提出できますが、その年分から青色申告をしたいのであれば、青色申告承認申請書は原則として事業開始日から2か月以内に提出します。
開業届の期限だけを見ていると、その年分の青色申告に間に合わなくなる可能性があるため注意しましょう。
副業を青色申告するメリットと注意点
青色申告には、青色申告特別控除や赤字の繰越しなどのメリットがあります。一方で、帳簿をつける必要があり、青色申告を選べばすべての副業で税金が安くなるわけではありません。
条件を満たせば最大65万円の控除を受けられる
2026年分の青色申告特別控除は、要件によって最大65万円、55万円、10万円に分かれます。
| 最大控除額 | 主な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円控除の要件を満たし、期限内にe-Taxで申告するか、一定の電子帳簿保存を行う |
| 55万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書などを添付して期限内に申告する |
| 10万円 | 55万円・65万円控除の要件を満たさない青色申告者 |
会社員の副業で65万円控除を目指すのであれば、複式簿記で帳簿をつけ、必要な決算書を作成したうえで、期限内にe-Taxで申告する方法がわかりやすいでしょう。
ただし、65万円控除は「税金が65万円減る制度」ではありません。たとえば、青色申告特別控除を差し引く前の事業所得が100万円で、65万円控除を受けられる場合は、原則として100万円から65万円を差し引いた35万円をもとに所得税を計算します。
また、控除前の対象所得が40万円であれば、65万円を差し引いて25万円の赤字にすることはできません。控除できる金額は、対象となる所得の金額が上限です。
なお、2027年分以後は制度が変わります。10万円控除についても2027年分から要件が変わるため、2027年分以後の申告では最新の条件を確認しましょう。
参考:国税庁「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ」
事業所得の赤字は給与と相殺したり翌年以後に繰り越せる場合がある
事業所得で赤字が出た場合は、一定の範囲で給与などほかの所得と相殺できる場合があります。これを「損益通算」といいます。
たとえば、副業の事業所得で損失が生じた場合、本業の給与所得などと損益通算できれば、その年の所得を減らせることがあります。さらに、損益通算をしても差し引ききれず純損失が残った場合は、青色申告をしているなどの要件を満たせば、原則として翌年以後3年間にわたって繰り越すことが可能です。
一方、副業が雑所得に当たる場合、その赤字を本業の給与などと損益通算することはできません。そのため、「副業が赤字だから給与から差し引ける」と一律に考えるのではなく、まず事業所得と雑所得のどちらに当たるかを確認する必要があります。
青色申告は帳簿付けや書類作成の手間が増える
青色申告では、売上や経費を帳簿につけ、受けたい控除に応じた書類を作成する必要があります。55万円・65万円控除を受ける場合は、原則として複式簿記による記帳が必要です。
複式簿記とは、一つの取引について、お金がどこから入り、何に使われたのかなどを複数の面から記録する方法です。さらに、1年間の売上や経費をまとめる「損益計算書」や、年末時点の預金・売掛金・借入金などをまとめる「貸借対照表」も作成します。
ただし、白色申告なら帳簿をつけなくてよいわけではありません。白色申告でも、事業所得などがある方には記帳や帳簿書類の保存が必要です。
そのため、青色申告と白色申告の違いは「帳簿をつけるか、つけないか」ではありません。どの方法で記帳し、どの特典を利用するかという違いで考えるとわかりやすいでしょう。
参考:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
副業所得20万円以下のルールと青色申告できるかは別に考える
「副業の所得が20万円以下なら確定申告をしなくてよい」という話と、青色申告ができるかどうかは別の制度です。一定の給与所得者については、給与所得・退職所得以外の所得金額が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要になる場合があります。
一方、青色申告ができるかどうかは、副業が事業所得などに当たるか、青色申告の承認を受けているかなどで判断します。
副業の20万円ルールや、確定申告が必要になる条件については、次の記事で詳しく解説しています。
副業で青色申告を始める流れ
自分の副業が青色申告の対象になると考えられる場合は、次の順番で準備を進めましょう。
- 副業が事業所得など青色申告の対象になるか確認する
- 青色申告承認申請書など必要な書類を期限までに提出する
- 売上や経費を帳簿につけ、領収書・請求書などを保存する
- 青色申告決算書と確定申告書を作成して提出する
青色申告の対象になる場合は、青色申告承認申請書を期限までに提出しましょう。必要に応じて開業届も提出しますが、2つの提出期限は同じではありません。
申告前には、次の4点を確認しておきましょう。
- 副業が青色申告の対象となる所得に当たるか
- 青色申告承認申請書を期限までに提出しているか
- 希望する控除額に必要な方法で記帳しているか
- 青色申告決算書と確定申告書を期限内に提出できるか
この順番で確認すれば、「開業届を出したから青色申告できる」「会計ソフトを使っているから65万円控除を受けられる」といった勘違いを防ぎやすくなります。
まとめ
会社員でも、副業が事業所得などに当たり、青色申告の承認を受けて必要な記帳や申告をすれば、青色申告を利用できます。ただし、Webライター、ブログ、物販などをしているだけで、自動的に事業所得になるわけではありません。開業届を提出しただけで青色申告になるわけでもありません。
まずは、副業の取引状況や継続性、売上、帳簿などを整理し、事業所得と雑所得のどちらに当たるかを確認しましょう。
青色申告の対象になる場合は、申請期限に間に合うよう手続きを行い、希望する控除額に必要な方法で帳簿をつけて確定申告の準備を進めることが大切です。
